集積回路を生じさせたシリコンウエハーの関税率表分類について
説明
(商品説明)
(1)本品は、塊状のシリコン(けい素)を薄く切って得られるシリコンウエハー(厚さ約0.2ミリメートル、直径約5センチメートル)の表面及び内部にダイオード、トランジスター、抵抗器、コンデンサー、相互配線その他の回路素子を生成させたものである。
一枚のウエハーからは、20~6,000個の素子を有するICチップが200~300個得られる。
(2)本品は、次に示す工程により製造されるが、これらの工程のうち主たるものは、酸化膜の形成、Photo-etching、不純物(真性半導体をP型又はN型の半導体に変える物質(例えば、ガリウム、スカンジウム及びアンチモン))の拡散及びアルミニウムの蒸着である。
(3)酸化膜の形成は、真性半導体に不純物を拡散させる際不必要な部分への拡散を防止することを目的とし、電気炉中においてシリコンウエハーを600~1,000℃に加熱してその表面を酸化させることにより行われる。Photo-etchingは、酸化膜の所定の部分を回路のパターンに応じて取り除くことを目的とし、酸化膜の上にPhoto-resist(腐蝕液に侵されにくい感光剤)を塗布し、その上にあらかじめ用意されたマスク(回路のパターンをシリコンウエハーに焼き付けるための原版)をかぶせ露光現像して、感光していない部分を腐蝕によって取り去ることにより行われる。また、不純物の拡散は、etchingによって酸化膜が取り除かれた部分のシリコンを所定の深さまでP型又はN型の半導体にすることを目的とし、拡散炉中において不純物を加熱してガス状にし、シリコンウエハーの所定の部分に浸透させることにより行われる。
これらの各工程を回路のパターンに応じ6~8回繰り返すことによって、シリコンウエハ
ーの表面及び内部にダイオード、トランジスター等の素子を生成させる。
(4)アルミニウムの蒸着は、上記(3)の工程により生成された回路素子を相互に接続(配線)させることを目的とし、蒸着炉中においてシリコンウエハーの全表面にアルミニウムを蒸着
させたのちPhoto-etchingにより不必要な部分を取り除くことによって行われる。
(5)本品は、上記(4)の工程までを経たものである。
これを切断することにより個々のICチップが得られる。
(分類理由)
(6)本品は、半導体材料(シリコン)の表面及び内部に20~6,000個の回路素子を生成させ、各素子を相互配線により接続させた200~300個の回路から成る物品である。したがって、本品は単なるシリコンから成る素材ではなく、IC回路の集合体と認められる。
(7)関税率表第85.42項には、集積回路が属する。本品を構成するICチップは、支持部分又は他の機器への接続部分を有してはいないので、第85.42項の集積回路の未完成品と認められる。しかしながら本品は完成品である集積回路の主要構成部分である回路素子を有しており、かつ、各回路素子の間の配線も終っているので通則2(a)により集積回路の未完成のもので完成した集積回路として重要な特性を有するものと認められる。
(8)以上のことから、本品は部分品としてではなく集積回路の未完の完成品として分類するのが適当と考える。